福島の山々 >> 北西部 >> 貉ヶ森山 (1315.1m)  
会越県境に位置する一等三角点の山。貉ヶ森山の貉という文字とムジナ
という音はとても印象に残る。貉とは本来アナグマ(イタチ科)のこと
らしいが、毛色が似ているのでタヌキ(イヌ科)のこともいうらしい。
いずれにせよ狢が棲息しそうな原生の自然が多く残っている貴重な山域
である。峰越林道「本名室谷」線が開通するまでは登頂の困難な秘境の
山だった。現在でも林道が工事で通行止となる場合は登山口となる塩ノ
倉峠までのアクセスが長くなるので注意したい。登山口となる塩ノ倉峠
からは1時間ほどで登れるが、背丈ほどのネマガリタケや灌木の藪こぎ
を覚悟しなければならない。東麓の大石田沢や霧来沢は沢登りでも人気
がある。山麓一帯はゼンマイやワラビなどが豊富で地元に多くの恵みを
もたらしている。

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貉ヶ森山
会津百名山

    交通:JR只見線「本名」または「会津川口」駅下車 タクシー利用
マイカー:国道252号線(沼田街道)金山町本名地区より林道を塩ノ倉峠まで入る
     ※林道「本名室谷」線の福島県側が通行止めの場合、新潟県側からも塩ノ倉峠まで可能
所要時間:塩ノ倉峠登山口(50分)1300mピーク(10分)山頂
他登山口:他に、新潟側からもコースあり


悠々と流れる只見川に沿って走る国道252号線を本名ダムまで行くと、 その堰堤脇から林道「本名室谷」線が延びる。修復工事などにより通行止めとなっていることが多いので、 通行止の期間や区間など看板に記載されている内容をよく確認しておこう。林道は相変わらず舗装率は低いが路面状況は以前よりかなり良くなった気がする。 途中、御神楽岳の登山口となる林道「三条線」を右に見て左方向(峰越林道)へ進む。

[ 参考 ] 林道「本名室谷」線の状況について事前に金山町または 新潟県阿賀町に問い合わせた方が無難。 但し、工事が行われている場合の車両の通行可否については現場判断もあるので気をつけたい。

悠々と流れる只見川 林道「本名室谷線」起点 通行止の看板
悠々と流れる只見川 林道「本名室谷」線の起点 通行止の看板
本名ダム 霧来沢橋 林道「三条線」への分岐
本名ダム 霧来沢橋 林道「三条線」への分岐


朝から霧に覆われていたが次第に好天になってきた。10月下旬、日尊倉橋から眺める霧来沢の清流と紅葉が美しい。 ここから林道は暫くは大石田沢の左岸沿いとなる。2kmくらい進むと大石田沢を離れ北側へ進路を大きく変え高度を上げてゆくが、 小笠倉山の西肩近くで車両は全面通行止めとなっていた。塩ノ倉峠まではまだ6km余りの距離がある。 2004年(平成16年)の新潟県集中豪雨時にこの林道も大きな被害を受けた。その修復工事だろうか。 通行止の所に車を駐車してひたすら砂利道を歩く。高度を上げると南東側の眺めが良くなる。 林道は日差しが照りつけ10月下旬だというのに暑いが、林道脇に時折見られるブナの大木の黄葉が青空に映え疲れを忘れるくらい見事であった。

[ 参考 ] 林道歩きの間、随分オフロードバイクとすれ違った。この林道は本名〜室谷まで40kmと距離が長く舗装率が低い為、 オフロードバイクのコースとして人気がある。福島県や新潟県以外のナンバーもよく見かける。 コーナーをかなりのスピードで走行する人もいるので気をつけたい。

霧来沢 通行止の看板 修復工事中の林道
紅葉が美しい霧来沢 通行止の看板 修復工事中の林道
林道をひたすら歩く 南東(志津倉山、博士山 ブナの黄葉
林道をひたすら歩く 南東(志津倉山、博士山) ブナの黄葉


高度を幾分上げると峻険なスラブを擁する御神楽岳と本名御神楽、前ヶ岳が見えてくる。幽幽とした山景にしばし見とれる。 蒲生岳かと見間違う笹倉山の三角形も中々いい。登山道沿いに咲くノコンギクやムラサキシキブの紫色をした実が美しい。 虫エイのないドングリのような綺麗な形状のマタタビの甘辛い刺激的な味が疲労回復にはいい。車で塩ノ倉峠まで行っては 見過ごしていたことだろう。歩く甲斐があるというものである。

[ 参考 ] 焼酎につけこんでマタタビ酒を作る場合は、虫エイの入ったマタタビがいいようである。 味や効能に違いがあるのだろうか。何とも不思議な話である。

北北西 北(御神楽岳、本名御神楽) 北北東(笹倉山)
北北西 北(御神楽岳、本名御神楽) 北北東(笹倉山)
ノコンギク ムラサキシキブ マタタビ
ノコンギク ムラサキシキブ マタタビ


通行止の地点から歩いて2時間ほどで貉ヶ森山と日尊の倉山の鞍部に着いた。ここが会越県境の塩ノ倉峠である。 通行止がなければ標高1130mのこの峠まで本名ダムの所から車で30分足らずだろう。 この峠から北側の尾根を登ると日尊の倉山の山頂に至るのでついでに登ろうと思ったが予定時刻を過ぎてしまった。日尊の倉山はまたの機会にとっておこう。 新潟県側も通行止の看板があったが、新潟や長岡ナンバーの車やオフロードバイクが何台も上ってきていた。 新潟県側は修復工事が完了したか休工日なのだろう。福島県側の比較的大きな工事もそろそろ終わりではないだろうか(要確認)。

塩ノ倉峠 会越街道開通記念碑 県境の標柱(標高1130m)
塩ノ倉峠 会越街道開通記念碑 県境の標柱(標高1130m)
祠 新潟県側へも通行止 保存林の看板
新潟県側へも通行止 保存林の看板


峠から新潟県側への林道を10mくらい進んだ所に登山口(踏み跡)がある。登り始めて間もなく東北電力の雨量観測計の近くを通る。 この付近はブナの大木が見事である。 尾根上の道を着実に高度を稼ぐが、踏み跡は見失い易く、背丈ほどのネマガリタケの中、少々藪こぎを強いられる所もあるので気をつけながら登ろう。 なお、踏み跡を見失ったとしても尾根上の直登なので道に迷うことはないだろう。念のために地図とコンパスは忘れずに持ちたい。 ある程度高度を上げると開けた所があり貉ヶ森山の山頂を仰ぎみることができる。

[ 参考 ] 幹回りが3m以上あるような大きなブナは、 「太郎ブナ」とか「ブナ太郎」などといった名前を付けられることが多い。 貉ヶ森山周辺はそんな「太郎級」のブナが多く残っていることに驚かされる。

登山口 登山道 東北電力の雨量観測計
登山口(踏み跡) 登山道 東北電力の雨量観測計
ブナの大木 笹藪を漕ぐ 貉ヶ森山の山頂を仰ぐ
ブナの大木 笹藪を漕ぐ 貉ヶ森山の山頂を仰ぐ


灌木の藪こぎに少々疲れてきた頃、1300mピークに到着。貉ヶ森山は双耳峰となっており北側のピークがここである。 ここからの展望は灌木の背丈が低い南〜西側がいい。浅草岳や守門岳がよく見える。 条件がよければ、妙高山や斑尾山、日本海が見えるかもしれない。一等三角点のある貉ヶ森山の山頂まではあと10分程度。

山頂北側の1300mピーク 山頂を望む 足元は灌木の根張り
山頂北側の1300mピーク 山頂を望む 足元は灌木の根張り
南南西 (雲河曽根山) 南西 (浅草岳、守門岳) 西南西 (矢筈岳、栗ヶ岳)
南南西 (雲河曽根山) 南西 (浅草岳、守門岳) 西南西 (矢筈岳、栗ヶ岳)


1300mピークで小休止した後は険峻な尾根の東側に滑落しないように注意しながら進む。稜線上にはイワウチワも見られる。 まだまだ手強い灌木を漕いで進むと崩落個所があり東側が開ける。御神楽岳や本名御神楽岳の眺めがいい。 2時間くらい歩いてきた林道もよく見える。大石田沢の深く長いスケール感も十分感じられる。 小休止したら灌木の中を3分程で山頂。一等三角点が設置されている。

[ 参考 ] 福島県に所在がある一等三角点は25箇所、県境も含めると31箇所ある。 (福島県の一等三角点一覧はこちら

山頂北側の1300mピーク 山頂を望む 足元は灌木の根張り
稜線上の登山道 イワウチワ 灌木を漕いで進む
山頂北側の1300mピーク 山頂を望む 足元は灌木の根張り
崩落個所 貉ヶ森山山頂 一等三角点


灌木に囲まれた山頂は狭いが灌木の背丈がそれほど高くないので、足元の高い所を探して立てばなんとか展望を得られる。 日尊ノ倉山や御神楽岳の展望がいい。

北 (1300mピーク) 北北東 (日尊ノ倉山) 北東 (笹倉山、大倉山)
北 (1300mピーク) 北北東 (日尊ノ倉山) 北東 (笹倉山、大倉山)
南南西 (雲河曽根山) 南西 (浅草岳、守門岳) 西南西 (矢筈岳、栗ヶ岳)
南南西 (雲河曽根山) 南西 (浅草岳、守門岳) 西南西 (矢筈岳、栗ヶ岳)


帰りは上ってきた道をそのまま戻る。ブナの黄葉が美しい。登山道は踏み跡は所々不明瞭なところがあるが全般的にはしっかりしている。 ネマガリタケと灌木の藪こぎは少々覚悟しなければならいが、それがまたこの山の楽しみでもあろう。 山頂から1時間足らずで登山口の塩ノ倉峠に戻ったが、峠から車を駐車した所まで2時間の林道歩きが長かった。

美しいブナの黄葉 登山口へ出る 登山口から峠の駐車場方面
美しいブナの黄葉 登山口へ出る 登山口から峠の駐車場方面



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