福島の山々 >> 南東部 >> 湯ノ岳 (593.4m)  
日本屈指の広い面積を誇るいわき市の中心市街地から南西へ10km程
のところに位置する。高僧徳一が山頂に観音堂を建立したと伝えられる
霊山で、古くはサハコ山(三函山、三箱山、三筥山、佐波古山)と呼ば
れた。いわき市は昭和30年代頃までは炭鉱の街として栄えたが、その
炭鉱は湯ノ岳の麓の弥勒沢(旧:白水村)で常磐炭鉱の祖といわれる片
寄平蔵が1855年(安政2年)に石炭の露鉱を発見したことに始まる
とされる。阿武隈山地には紺碧の太平洋を見渡すことができる山が幾つ
かあるが、この湯ノ岳もそのひとつ。山頂まで湯ノ岳パノラマラインが
通っており車で簡単に山頂に立て、市民の手軽な憩いの場所となってい
る。元旦は初日の出の拝顔スポットとしても賑わう。夜景も美しい。

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湯ノ岳
うつくしま百名山

    交通:JR常磐線「内郷」駅または「湯本」駅より、タクシー利用
マイカー:登山口付近に数台の駐車スペースあり
所要時間:藤原登山口(10分)御前坂・御前滝分岐(1時間10分)山頂
他登山口:川平登山口(川平炭坑山神様跡)田場坂登山口丸山公園
イベント:毎年8月頃に田場坂にある法海寺の住職の先導により
     山中に設けられた各木戸(行場)を巡る行事「お山掛け」が開かれる
     ※お山掛け参加などの問い合せ:いわき市藤原公民館(0246-42-2969)

藤原(川上)登山口 ( 所要時間:登山口から山頂まで1時間20分 )

藤原川の上流の景勝地「川上渓谷」から登り始める。お山掛けコースと呼ばれるこのコースは、 藤原林道の起点が登山口となっており、数台の駐車スペースがある。 登山口手前には〆張場がある。登山口から藤原林道を渓谷沿いに5分程歩くと不動滝。 さらに5分程で御前滝・御前坂分岐。御前坂を左に見て直進すると100m程の所に御前滝がある。 このまま沢を登ってもいいが、今回は分岐までもどり御前坂の九十九折りの急坂を登っていく。 山中の随所には磐城三十三観音五番湯ノ岳観音の別当「三箱山法海寺」が設置した 第一の木戸から第八の木戸までの柱標があり、僧侶の修行場だった頃の湯ノ岳を偲ぶことができる。 (第九の木戸と第十の木戸については、田場坂登山口からのコースをご覧ください。)

藤原登山口(藤原林道起点) 〆張場(第一の木戸) 藤原川(川上渓谷)
藤原登山口(藤原林道起点) 〆張場(第一の木戸) 藤原川(川上渓谷)
藤原林道 不動滝(第二の木戸) 崩落箇所(巻き道あり)
藤原林道 不動滝(第二の木戸) 崩落箇所(巻き道あり)
御前滝・御前坂分岐 御前滝(第四の木戸) 御前坂
御前滝・御前坂分岐 御前滝(第四の木戸) 御前坂


御前坂の九十九折りには「一曲がり」から「九曲がり」まで名称がついている。 「四曲がり」付近には大岩に座する見事な巨木を見ることができる。

一曲がり 二曲がり 三曲がり
一曲がり 二曲がり 三曲がり
四曲がり 五曲がり 六曲がり
四曲がり 五曲がり 六曲がり
七曲がり 八曲がり 九曲がり
七曲がり 八曲がり 九曲がり


御前坂を登りきると、傾斜は緩やかになり一息つける。毘沙門滝は柱標より少し 沢側に降りないと確認できない。さらに10分程登ると姥様があり、その脇には 水場(霊泉)がある。水場から少し登ると林道に出合うので100m程左へ行く と登山口があるのでそこからまた登り始める。初めは杉林だが次第に赤松林に変 わる。車の通行する音が聞こえると間もなく、湯ノ岳パノラマライン(県道37 1号線:湯ノ岳別所線)と出合う。

登山道 毘沙門滝(第五の木戸) 姥様(第六の木戸)
登山道 毘沙門滝(第五の木戸) 姥様(第六の木戸)
水場 林道 登山口
水場 林道 登山口
杉林の登山道 赤松林の登山道 車道(湯ノ岳パノラマライン)
杉林の登山道 赤松林の登山道 車道(湯ノ岳パノラマライン)


湯ノ岳パノラマラインを左へ50m程登ると車2台分程の駐車スペースがあり その脇が登山口となっている。幅の広い道を登ると直ぐに分岐。どちらを選ら んでも山頂に行けるが、三箱石を通過するには左を選択する。南麓の法海寺の 山号である三箱山は、ここの三つの霊石である三箱石に由来する。三箱石から 5分ほど歩くと三等三角点のある山頂。山頂一帯は通信施設が占拠し展望はあ まりない。

[ 参考 ] 高僧徳一が三学(戒、定、慧)の箱をこの大石の下に納めた(あるいは石に書き記した)ことから 三箱石といわれるようになったという伝承が残っている。また、古代朝鮮語ではハコは神を意味するという。 サハコの由来に関連する興味深い伝承の一つである。

登山口 分岐 登山道
登山口 分岐 登山道
アザミ (花期:9〜10月) リンドウ (花期:10〜11月) 三箱石(第七の木戸)
アザミ リンドウ 三箱石(第七の木戸)
経塚(第八の木戸) 山頂 三角点
経塚(第八の木戸) 山頂 三角点
北東 南東 北西
北東 南東 北西


山頂から1km程北は湯ノ岳パノラマラインの終点(終点から先は林道)となってお り駐車場と展望台がある。ここからは360度の大パノラマが広がり、北には三大明 神山や一等三角点を有する二ツ石山、北東にはいわき市のシンボル的存在の水石山、 東側〜南側にはいわき市街地と紺碧の太平洋を望める。展望台直下の東側にはパラグ ライダーのテイクオフエリアがあり悠々とパラグライダーを楽しむ人々をよく見かけ る。展望台付近にはブランコやジャングルジム、滑り台等もあり子供連れで楽しめる。 また湯ノ岳の中腹には丸山公園・湯ノ岳山荘がありバンガローやキャンピング場など が整備され多くの家族連れで賑わう。

湯ノ岳パノラマライン 山頂駐車場 展望台
湯ノ岳パノラマライン 山頂駐車場 展望台
北西(三大明神山方面) 南東(小名浜港方面) 南(湯ノ岳山頂方面)
北西(三大明神山方面) 南東(小名浜港方面) 南(湯ノ岳山頂方面)

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川平登山口 ( 所要時間:登山口から山頂まで2時間 )

川平炭鉱跡(山神様跡)にも登山口がある。こちらも古くからよく利用されている登山口である。近 年、川上渓谷のコースに比べて登山者は少なっくなったが踏み跡はしっかりしている。 登山口は民家の間の道を30mほど入った所にあるので少々分かり難い。竹林の中の登 山道を登り始めるが、間もなく尾根道に変わる。常磐自動車道を走行する自動車の走行 音が次第に大きくなり、高速道路の上を跨ぐ川平8号橋を渡ったら左手前方のコンクリ ートの階段を上っていく。

民家の間を入る 川平登山口 指道標
民家の間を入る 川平登山口 指道標
竹林の中の登山道 尾根道 川平8号橋
竹林の中の登山道 尾根道 川平8号橋
常磐自動車道 コンクリートの階段 アオキの多い登山道
常磐自動車道 コンクリートの階段 アオキの多い登山道


高速道路の車の走行音も幾分小さくなった頃、小沢を渡る。指道標があるので、コース が間違いないことを確認できる。夏場だとこの辺から暫くは蚊やクモの巣に悩まされる ので、忌避剤を忘れないようにしたい。米軍機遭難慰霊碑(11分)の看板のある作業 道と出合と間もなく道は二岐に道分かれるが、テープや踏み跡をよく見て登れば大丈夫。 やがて薄暗い杉林から明るい雑木林に変わり露岩の尾根道を歩く。ブナの大木が見事。 展望台への分岐地点まで来れば山頂は近い。林床には笹が生い茂るようになる。

小沢を渡る 指道標< 作業道と出合う
小沢を渡る 指道標 作業道と出合う
杉林の中の登山道 雑木林の中の登山道 露岩の尾根道
杉林の中の登山道 雑木林の中の登山道 露岩の尾根道
ブナの大木 展望台への分岐 笹の多い登山道
ブナの大木 展望台への分岐 笹の多い登山道


7月上旬、暗く湿った杉林の登山道脇にはジャノヒゲが目立った。ヤマアジサイは 名残り咲きで、そろそろタマアジサイが見頃を迎えようとしていた。

リョウブ(サルスベリ) ジャノヒゲ タマアジサイ
リョウブ(サルスベリ) ジャノヒゲ タマアジサイ
ヤマアジサイ ウワバミソウ オヤリハグマ
ヤマアジサイ ウワバミソウ オヤリハグマ


川上渓谷・田場坂(藤原登山口方面)への分岐の看板を右にみて左へ少し登ると、 鳥居が見えてくる。鳥居をくぐると第七の木戸(三箱石)がある。三つの岩がある のでお参りして行こう。さらにノハナショウブ、オカトラノオ、アザミの目立つ登 山道を登り、通信施設のアンテナが見えてくると車道と出合う。程なくして第八の 木戸(経塚)のある山頂に着く。

川上渓谷・田場坂への分岐 第七の木戸(三箱石) 車道との出合い
川上渓谷・田場坂への分岐 第七の木戸(三箱石) 車道との出合い
ノハナショウブ オカトラノオ アザミ
ノハナショウブ オカトラノオ アザミ
通信施設 山頂 第八の木戸(経塚)
通信施設 山頂 第八の木戸(経塚)

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田場坂登山口 ( 所要時間:登山口から山頂まで2時間 )

いわき市常磐藤原町田場坂にも登山口がある。 江戸時代の宿場町の面影を残す「田場坂の町並み」は「いわき百景」にも選定されている。 県道14号線(御斉所街道)から法海寺へ入り800m程過ぎた所が田場坂登山口。 柱標が建っているが見過ごし易いので注意。しっかりした踏み跡の登山道を登ってゆく。 桧林の中の急坂にはトラロープや階段も整備されている。

田場坂 法海寺 登山口
田場坂 法海寺 登山口
指道標 登山道 桧林
指道標 登山道 桧林
タネツケバナ (4月上旬) モミジイチゴ (4月上旬) ハコベ (4月上旬)
タネツケバナ (4月上旬) モミジイチゴ (4月上旬) ハコベ (4月上旬)


登山口から30分程で丸山公園分岐。沢を離れ雑木林や杉林・桧林の中を進み沢を渡る。 途中、頭上が大きく開けた広場のような所を過ぎ雑木林の中を登ってゆく。 暫くすると湯の岳パノラマラインのガードレールが見え隠れするようになる。 4月上旬キブシの淡い黄色い花が随分と目立つ。

丸山公園分岐 指道標 沢を渡る
丸山公園分岐 指道標 沢を渡る
アオキ (4月上旬) ウグイスカグラ (4月上旬) キブシ (4月上旬)
アオキ (4月上旬) ウグイスカグラ (4月上旬) キブシ (4月上旬)


登山口から1時間30分程で湯の岳観音堂跡地。石段を上ると真新しい湯の岳観音堂別院が建っている。 由緒書きには高僧徳一が建立したとされる観音像と観音堂の変遷が記されている。 第十の木戸の柱標を探したところ新しい観音堂の裏側に置かれていた。 4月上旬、春を感じさせるオオイヌノフグリの小さな花が愛らしい。 指道標に従ってパノラマラインの方へ歩き、車道を渡ってガードレール脇から取りつく。

石段 観音堂跡地 由緒書き
石段 観音堂跡地 由緒書き
観音堂別院 第十の木戸(観音堂跡地) オオイヌノフグリ (4月上旬)
観音堂別院 第十の木戸(観音堂跡地) オオイヌノフグリ (4月上旬)
山頂方面 車道を渡る ガードレール脇より登る
山頂方面 車道を渡る ガードレール脇より登る


観音堂跡から5分程で第九の木戸。登山道はパノラマラインの直ぐ脇を通っている。 杉林を抜け雑木林の中をひと頑張りで山頂へつく。観音堂跡からは30分程である。 ミヤマシキミの花は4月後半が見頃だろうか。

[ 参考 ] 湯の岳パノラマラインは路面の舗装状況もよく気持ち良いカーブが続くので、 週末ともなると高出力エンジンを搭載した車や大排気量オートバイがかなりの スピードで走行を繰り返す時がある。県内はもとより県外ナンバーの車輌も 時折り見かける。そのような時に車道近くを通るときには、エンジン音やマフラー音、 排気ガスの臭いがひどい場合があることを覚悟しなければならない。

登山道 第九の木戸(お龍灯場) パノラマライン脇を通る
登山道 第九の木戸(お龍灯場) パノラマラインの直ぐ脇を通る
杉林の中を通る 登山道 ミヤマシキミ (4月上旬)
杉林の中を通る 登山道 ミヤマシキミ (4月上旬)

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丸山公園 ( 所要時間:登山口から山頂まで1時間30分 )

湯の岳の南麓には丸山公園がある。ヤギやシカなどの小動物が飼育されており遊具もあるので子供連れで遊ぶのにいい。 4月の桜や5月のツツジの時期もお勧め。丸山公園の奥の方には湯の岳山荘があり宿泊やキャンプができる。 丸山公園の上の方には、湯の岳平和観音と慰霊碑が建っている。ここからは太平洋の大海原を見渡せる。 先の大戦により遥か海の彼方で非業の死を遂げられた多くの方々の供養の為に地元の皆さんが建立したもの。

[ 参考 ] 湯の岳は不法投棄が目立つ。人目のつかない山中のいたる所まで車道が通っており捨て易いのだろう。 地元の方々が愛してやまない歴史ある霊峰の悲しみの声が聞こえてきそうである。 先の大戦で異国の地で亡くなった方々はどれほど日本本土へ帰還したかったことだろうか。 その夢にまでみた日本の現状はあまりにも悲しい・・・。

丸山公園 動物の檻 湯の岳山荘
丸山公園 動物の檻 湯の岳山荘
湯の岳平和観音と慰霊碑 平和観音像由来 不法投棄されたゴミ
湯の岳平和観音と慰霊碑 平和観音像由来 不法投棄されたゴミ


丸山公園出入口から湯ノ岳パノラマライン(県道371号線:湯ノ岳別所線)を30mほど山頂よりに上った所が登山口となる。 白いガードケーブルの△型端末支柱の隙間から下りていく。沢に沿って5分ほど下ると指道標が立っており田場坂登山口からのコースと出合う。

丸山公園出入口 登山口 指道標
丸山公園出入口 登山口 指道標

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山頂からの360度パノラマ展望シミュレーション (A4印刷対応はこちら



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