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2000m近い標高の山であるが磐梯吾妻スカイラインを利用すればかなりの高度を稼げるので、比較的手軽に登ることができる。
磐梯吾妻スカイラインは土湯峠と高湯温泉にゲート(料金所)がある。
普通車の場合、ゲートで1570円の通行料金を支払う。
土湯峠は東北自然歩道「新奥の細道」の「樹海の中の滝を巡って浄土平へ向うみち」の起点ともなっている。
鳥子平登山口のあるスカイライン最高点(1622m)を過ぎて、1.5kmほど下った所が兎平駐車場。
駐車場に入ると正面に噴気を上げる一切経山がよく見える。
[ 参考 ] 磐梯吾妻スカイラインには吾妻八景と呼ばれる景勝ポイントがある。
国見台、天風境、湖見峠、双竜の辻、浄土平、天狗の庭、つばくろ谷、白樺の峰と名前が付いている。
土湯峠〜浄土平では、そのうちの5つ(国見台、天風境、湖見峠、双竜の辻、浄土平)に立ち寄ることが出来る。
浄土平から高湯方面へ下れば残りの3つ(天狗の庭、つばくろ谷、白樺の峰)があるので、
時間があれば帰りに高湯方面へ下るのもいいだろう。
[ 追記 2014.08.17 ] 磐梯吾妻スカイライン、磐梯山ゴールドライン、磐梯吾妻レークラインは、
2013年7月24日に償還終了し、通行無料(一般道)となっています。
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兎平駐車場からスカイラインの車道を挟んで、吾妻小舎と兎平キャンプ場(兎平野営場)への入口がある。
今回は、浄土平方面へ車道を少し歩いた所から桶沼へ入ることにする。
兎平駐車場から300mほど車道を歩くと右手に桶沼への入口がある。案内図もあるのでコースをよく確認しておこう。
7月中旬、登山道沿いのハクサンシャクナゲが見頃を迎えている。少し上ると斉藤茂吉の歌碑がある。
大正5年に吾妻山を訪れた斉藤茂吉が高湯温泉の宿で詠んだ歌が刻まれている。ベンチもあるので、小休止するのにもいい。
ここからは桶沼の全景を望める。
桶沼は五色沼(吾妻の瞳)同様、神秘的な雰囲気が漂う紺碧の美しい沼である。
この沼が吾妻小富士と同様の火口だったことは中々想像できない。
[ 参考 ] 浄土平にはトイレやレストハウス、ビジターセンターがあるので、浄土平駐車場を利用するのもいい。
ただし、駐車料金として乗用車の場合は500円が必要となる。
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7月中旬、ベニバナイチヤクソウが咲いていた。キタゴヨウ(ヒメコマツ)の立派な球果も目立つ。
八重のハクサンシャクナゲのネモトシャクナゲを探して歩くが、見つからない。
やがて浄土平からのもう一つの道(東北自然歩道)を合わせる。
吾妻小舎で小休止し、ネモトシャクナゲの場所を教えていだだく。
1954年(昭和29年)に福島県の県花に指定されているが、実際に見たのは今回が初めて。
1903年(明治36年)に福島師範学校の中原源治助手が発見し、根本莞爾教諭によって植物学者の牧野富太郎氏に送られ新種と認定され、
1923年(大正12年)に自生地が国の天然記念物に指定された貴重な種である。
通常のハクサンシャクナゲより、一週間程度見頃の時期が早いそうなので訪れるタイミングに気をつけたい。
兎平キャンプ場に入ると道端にマイヅルソウ、タニギキョウ、ミツバオウレンの花が随分咲いている。
シラビソ、ダケカンバ、コメツガの目立つ兎平キャンプ場の中を抜けると、頭上が一気に開け鳥子平の湿原。
7月中旬、白いワタスゲの果穂が風に揺れて可愛い。
[ 参考 ] ■浄土平にはトイレやレストハウス、ビジターセンターがあるので、浄土平駐車場を利用するのもいい。
ただし、駐車料金として乗用車の場合は500円が必要となる。
■吾妻小舎は1934年(昭和9年)に開業した歴史ある山小屋。浄土平の喧噪から離れゆったり過ごすのにもいい。
営業期間は磐梯吾妻スカイラインが再開通する4月下旬から11月上旬まで。
■兎平キャンプ場は2005年に改修されて新しくなった。
トイレや炊事棟も綺麗で、登山のベース基地としてもお勧め。(テントサイト一張り500円、大人一人につき400円が必要。要予約)
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鳥子平登山口へ出る直前に、逆光だが運よくホシガラスを撮影できた。
シラビソやコメツガ、キタゴヨウ(ヒメコマツ)の針葉樹林帯でよく見かける鳥である。
鳥子平登山口には乗用車4〜5台くらいの駐車スペースがあるので、ここに車を置いて登るのもいいだろう。
最初は木々が鬱蒼として根張りの目立つ登山道。滑りやすいので気をつけたい。
やがて頭上が開け木道に変われば景場平。東吾妻山のたおやかな山容が美しい。
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7月中旬、景場平の木道沿いには多くの花々を楽しめる。
特にチングルマの果穂が目立つ。
10月頃まで、時期を変えて登ればその都度新しい花々に出合うことであろう。
撮影した時には雨交じりの天候だったが、その分色鮮やかな花々を楽しめた。
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次は展望台を目指し景場平を後にする。
シラビソやコメツガの根張りや苔むした石が目立つ滑りやすい登山道を登る。
ミネカエデやオオバスノキの花やクロウズコの実などが目立つが、この付近のシャクナゲはまだ蕾である。
景場平から1時間ほどで展望台。
矮小化したシラビソやコメツガ、キタゴヨウ(ヒメコマツ)が多い。
付近には池塘が散在する。
展望台からは猪苗代湖や磐梯山、裏磐梯の湖沼群、中吾妻山の眺めがいい。
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展望台からユキザサ、ハリブキ、ハクサンシャクナゲの目立つ登山道を登ると、
やがて灌木帯から森林限界のハイマツ帯に変わる。
ザレた道端にコケモモの咲くハイマツ帯を100mほど上ると三等三角点のある山頂。
磐梯山、裏磐梯の湖沼群、中吾妻山、西吾妻山、谷地平、鎌沼、一切経山、吾妻小富士などの雄大な眺望を心ゆくまで楽しめる。
[ 参考 ] 森林限界より高所では、ハイマツなどの小低木が多いハイマツ帯となる。
福島県の森林限界は1600〜2000m付近のようである。
東吾妻山の場合、標高1500m以下にブナやミズナラなどの広葉樹、
1500m〜1800mにシラビソやコメツガ、キタゴヨウ(ヒメコマツ)などの針葉樹、
1800m〜1900mが針葉樹の灌木、1900m以上にハイマツが多く見られる。
同じ吾妻連峰でも、形成年代の古い西吾妻山は2035mの山頂にもシラビソが生えている。
東吾妻山の山頂も徐々にシラビソが進出してくるのだろうか。
今後は地球温暖化による変化も顕著になってくるだろう。
吾妻連峰のハイマツ帯や針葉樹林帯が消える日もそう遠くないかもしれない。
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山頂の展望を楽しんだら鎌沼を目指す。山頂から北側のハイマツ帯を下って行く
ハイマツ帯の面積は山頂南側より北側の方が圧倒的に広い。
ハイマツの中に、クロマメノキやシャクナゲが混在する。
高度を下げて行くと、シラビソやコメツガの針葉樹林帯へと変わる。
初めは灌木が目立つが、次第に樹高も高いものが多くなってゆく。
薄暗い道端にはモミジカラマツが目立った。
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平坦な道に変わると間もなく姥ヶ原登山口。姥ヶ原の平坦な木道を北進すると直ぐに十字路。
左へ谷地平、右へ浄土平への道を分け、鎌沼を目指す。
マルバシモツケやミネヤナギ、矮小化したキタゴヨウ(ヒメコマツ)が目立つ。
やがて眼下に鎌の形をした鎌沼を望めるようになる。
浄土平では花の終わったイワカガミも鎌沼付近はまだ見頃。
鎌沼の畔までくると東吾妻山が雲に覆われてしまった。
ここからの東吾妻山の眺めはとてもいいので、少々残念。
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鎌沼からは比較的湿原の形成年代が新しいといわれる酸ヶ平。
木道脇は植生保護のためトラロープが張られているので立ち入らないようにしたい。
酸ヶ平から一切経山分岐地点から150mほど一切経山方面へ入ると、
1999年に改築された酸ヶ平避難小屋と2005年に新築されたトイレがある。
小屋内部は大部分がコンクリートの土間となっている。
トイレ入口にはチップ投入口があり、一回100円程度の協力金を入れる。
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酸ヶ平避難小屋から来た道を分岐点まで戻り、浄土平を目指す。
鎌沼と酸ヶ平をから流れ出る沢を左手に見ながら、ハクサンシャクナゲの白い清楚な花が目立つ木道を下る。
7月中旬だというのに沢には残雪が少し残り、見た目に涼しげでいい。
浄土平まで下ると途中噴気を上げる一切経山への直登コースを左に分ける。
大穴火口の噴気が強く硫化水素などの危険性が高いので立入禁止の看板が立っていた。(最新情報は要確認)
桶沼分岐の指道標にしたがってスカイラインの車道へ出て400m程歩けば、兎平駐車場へ戻る。
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